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保育園でたびたび見られることのある、子どもの試し行動。
保育士を困らせる子どもの行動のひとつです。
試し行動の対応に正解はありませんが、保育士が感情的にならないことが大切です。
試し行動は、どのような場面で現れ、どのような原因でそのような行動をとっているのでしょうか?
今回は、子どもの試し行動に対する保育士の対応をお伝えしていきます。
試し行動への対応・保育士
子どもが保育士に対して試し行動をとった時、保育士はどうすれば良いのでしょうか?
試し行動の子どもの背景には、様々な事情がある場合もあります。
正直に言いますと、対応に正解はありません。
大切なのは、『保育士が感情的にならないこと』です。
子どもの態度に腹が立ってしまったり、カッなってしまうことがあるかもしれませんが、わたしたちは保育士です。
子どもには感情的にならないように心がけましょう。
対応に一貫性を持つ
子どもの対応に一貫性を持つこと。
大切なことですね。
〝あの先生は良くて、この先生はだめなんだな〟と、子どもながらに先生の使い道をわけてしまう場合があります。
どの保育士も子どもに対して同じ思いで、一貫性を持って対応しましょう。
心が折れそうになることがあるかもしれませんが、そこはぐっと心を強く、子どもに真摯に対応しましょう。
気持ちを受け止める
試し行動をした子どもの気持ちを受け止めましょう。
子どもの心の中には、無意識かもしれませんが何か原因となったことがあるはずです。
まずは子どもの気持ちを受け止めましょう。
「◯◯だったの?それで◯◯だったのかな?」
子どもの気持ちを汲み取り、優しく話して向き合うことで、
『先生が自分の気持ちを受け入れてくれた』と子どもは安心することができるかもしれません。
過度に反応しない
試し行動に対して、ひとつひとつ反応していては、子どもは調子にのってしまい、どんどん続けてエスカレートします。
試し行動をしている子どもを視界には入れつつも、適当に受け流す程度でも悪くないですよ。
子どもは、保育士(大人)の気を引きたいのです。
『あれ?先生、全然反応してくれないや』と思って、あっさり落ち着くこともあります。
面倒くさいから子どもを放っておくのではありません。
保育士の視界には入れて、ある程度のことは見守り、認識はしておきましょう。
こんな行動をとっていたということで、保育士間で共有したり、保護者に伝える際に必要です。
見守る上での注意事項ですが、怪我をしてしまうような行動や、他児に危害が及ぶ行動の時には、強く注意するようにしましょう。
突き放さない
難しいことですが、子どもを突き放すことは絶対にいけません。
子どもの試し行動で保育士(大人)が子どもを突き放してしまった場合、子どもの心にはずっとその傷が残ってしまいます。
その結果、子どもはどんどん自分を出せなくなってしまうことも。
試し行動の子どもの心の中には、必ず何かあるはずです。
保育士(大人)に見てほしい、自分のことをかまってほしい、気づいて欲しい。
そんな子どもの心に寄り添い、見守りましょう。
子どもとの信頼関係を育む
新しい担任や、新人保育士に対しては、指示をきかなかったり、わざと意地悪な行動をしてしまう子がいます。
それは、子どもと保育士の間に信頼関係がないからです。
信頼関係のない人に対して、大人だって心をオープンに開きませんよね。
信頼関係のない人に対して試し行動をとることで、子どもは保育士(大人)の様子を伺っているのです。
『この人どんな反応するかな?』と、子どもなりに考えているのです。
これも信頼関係を育むうえで必要な通り道。
子どもとたくさん関わり、子ども理解に努めましょう。
特別扱いはしない
ひとりだけを特別扱いしないこと。
どんなことがあっても保育士はブレないことが大切です。
ひとりの子を特別扱いすることで、他の子どもたちが『なんであの子だけ?こうやったら先生にこんなことしてもらえるの?ずるい。』と、思われてしまうかもしれません。
同様の行動をとることで、構って欲しい気持ちをアピールする子が増える可能性もあります。
支援が必要な子どもであれば話はかわってきますが、集団生活の中でひとりだけ特別扱いをすることは避けましょう。
どの子も全員、特別な子どもなのです。
保護者との連携を密にして、試し行動の背景を探る
保護者との連携を密にして、子どもの行動に対する背景を探りましょう。
保護者との話をする中で、「実は家でこんなことがあって…。」と保護者がきっかけに気づくことがあるかもしれません。
これも保育士と保護者の信頼関係はないと、密に連携をとることはむずかしいですね。
信頼関係のない保育士から言われてしまうと、些細なことでも保護者が拒絶してしまう可能性があります。
普段から保護者とのコミュニケーションを大切にしましょう。
何でも良いです。
1日一言は話すようにすると良いですよ。
また、子どものことで良くないことを保護者に伝える前に、良いエピソードや、おもしろいエピソードを話したあとで、本題にはいると良いですよ。
保護者も、急によくない話をされるより、明るい話を聴いたあとの方が、保育士からの話を聞き入れやすいです。
記録を取る
子どもの試し行動が続いている場合は、遡って現在までの記録をとりましょう。
続いているということは、子どもの中でも何かがずっとあるはずです。
普段から保育士は子どもの成長記録をとっているとは思いますが、それ以外に別で、気になることだけをまとめた記録があると、後々良いでしょう。
試し行動とは
試し行動とは、子どもが保育士(大人)を試す行動です。
色々な試し行動がありますが、大まかに言うと、下記のようなことから、気持ちとは裏腹な行動にでることです。
- 大人の気を引きたい
- 自分に注目してほしい
- 寂しい
- 愛を感じたい
- かまってほしい
試し行動の具体例
試し行動の具体例をご紹介します。
子どもも自身、きっと〝良くないこと〟とわかっていながらやってしまうので、心の中で葛藤があると思います。
試し行動をしないとどうにも発散できないのですから、子ども自身大変ですね。
わたしが保育園で勤めていたとき、2歳児クラスの男の子に試し行動が見られました。
わたしが育休明けで職場復帰したばかりで、男の子とわたしの間には面識もないし信頼関係もなし。
その男の子は0歳児クラスから在籍している子でした。
わたしはその年度は副担任の様な立場。
ペアの保育士は持ち上がりで担任をしていました。
ペアの保育士の指示は通るのに、わたしの話はおもしろいくらい何にも聞いてくれません。
そして、わたしにかける言葉は汚い言葉だったり、顔に唾をブーっと吐いてみたり、話を聞こえないふりしたり。
その子の保護者からの話だと、家に帰るとわたしのことは「だいすき」と言っていたそうです。
わたしも対応に悩みましたが、一貫性をもってブレないこと。
子どもにとにかく向き合うことで、半年くらいかかりましたが、試し行動は落ち着きました。
その翌年、新卒保育士がそのクラスの担任となりましたが、全く同じことが起きました。
1年目の保育士は毎日泣いていました。
『自分の対応がうまくいかない、話を聞いてくれない、クラスがうまくまわらない。』
悩んでいましたが、新人保育士もとにかくその子に向き合うことで、信頼関係を育み、保育士自身も強くなっていました。
試し行動は、保育士自身、心が折れてそうになってしまうことがあります。
気持ちを強くもって、対応しましょうね。
物を投げる・壊す
試し行動の中には、様々な行動がありますが、とにかく保育士(大人)の気を引きたいのです。
わざとに物を投げたり、壊したりすることがあります。
そこまでして大人の気を引きたいなんで悲しいですが、実際良くある光景です。
言うことを聞かない
大人の気を引きたいのですから、怒られてでも、かまってほしいのです。
言うことを聞かないで怒られたって、へっちゃらなのです。
もしかしたら心の中で、何かむしゃくしゃすることがあるのかもしれません。
何で話を聞いてくれないのか、子どもに静かな落ち着ける場所で2人きりで話してみると良いですよ。
大声で泣き叫ぶ
心の中が葛藤しているので、ついに大声を出して泣いてしまうのです。
そんな時には、気持ちを受け止め、抱きしめてあげましょう。
子どもはきっと何か伝えたいことがあるはずです。
「うるさい!」ではなく、「どうしたの?」と話を聞いて寄り添いましょう。
叱られることを繰り返し行う
叱られることを繰り返す行うことで、自分が注目されるので、見て欲しくて仕方がないのです。
わざと叱られるのは好ましくないですよね。
あまりにもひどくエスカレートする場合は、視界には入れつつ、反応しないようにしてみましょう。
『あれ、先生反応してくれなくなったぞ』と、あっさりやめるかもしれません。
わざと怒られることをする
怒られてまで、気を引きたいのです。
怒られ慣れているので、怒られることが平気な子に多く見られます。
怒られてまで保育士に注目されたいって、悲しいことです。
なぜそのような行動にでてしまうのか、子どもの心の中や家庭背景にはどのようなことが起きているのか、考えてみましょうね。
試し行動の見分け方
試し行動の見分け方は、まずはその行動をとるのは、自分だけなのか・他の保育士にもなのか、そこをはっきりさせましょう。
自分だけに対することであれば、自分との信頼関係の問題かもしれません。
全体の保育士に対してそうであれば、家庭環境や子どもの心に何かかかえていることがあるのかもしれません。
子どもの行動をよく見て、把握することから始めましょう。
試し行動が現れる場面
保育園生活の中であれば、いつだって試し行動は見られます。
全体への指示を伝える場面で、特に多い様に感じます。
あれ?おかしいな?と思ったら、様子を観察するようにしましょう。
また、自由あそびの中でも見られることがありますので、気になるときには視界に入れて把握しておきましょう。
試し行動の原因
試し行動の原因は、その子によって違いますが、いくつかご紹介します。
- 担任がかわった
- 新人保育士を試す
- かまってほしい
- 愛情不足
- 虐待
- 家庭内で何かあった
- 母親が妊娠した
- 両親の喧嘩
- 兄弟の反抗期
- ストレス
- 大人の気を引きたい
- 環境がかわっ
これらが全て原因とはなりませんが、このようなことから、試し行動の原因となっていることがあります。
子どもの背景を知ることが大切です。
些細なことでも気づいたら、メモに書いて記録しておくと良いですよ。
赤ちゃん返り
ママが妊娠したり、弟妹が生まれたことで、赤ちゃん返りする子がいます。
その時は、子どもの気持ちを受け止めてあげましょうね。
同じく赤ちゃん扱いをしてあげたり、やりたいようにさせてあげましょう。
自分への愛情を確認しているのです。
ですので、上の子には「だいすきだよ」と、たくさん伝えてあげましょう。
そのうち気持ちが落ち着くと、赤ちゃん返りはおわりますよ。
イヤイヤ期
試し行動に似ているのが、イヤイヤ期です。
自我の芽生えから、なんでも自分でやりたい、自分の思いがあるので、「イヤ!」となるのです。
小さいながらに、子どもにも意思があるので、ある程度は見守りましょう。
イライラしてしまうかもしれませんが、大人も「イヤなのねわかったよ〜」くらいで流しておくと、疲れませんよ。
放っておくのではなく視界には入れて、把握はするようにしましょうね。
危険な時には、イヤでも何でも行動を止める必要があります。
愛情不足・愛着障害
愛情不足・愛着障害から、保育士に対して試し行動をとって愛情を確認・愛情を求める子がいます。
これは、家庭環境の問題が背景にあることが原因です。
しかし、保育士は保育園にいる間しか子どもと関わることはできません。
保育園で過ごす間は保育士が〝愛情を与える人・くれる人〟となり、子どもに対して愛をかけてあげましょう。
保育士のぬくもりや優しさ、愛情を感じることで、保育園で過ごす間は、安心できるかもしれません。
子どもに何か異常や、いつもと違う様子が見られた場合には、上司に報告し、児童相談所などと連携をとる必要があります。
慎重に見守っていきましょう。
相手にされていないと感じている
『自分なんて…』と自己肯定感が低く、自分は誰からも相手にされないと悲観的になってしまったことから、試し行動に出る子がいます。
そんな時は、その子のことを認めてあげるようなことを伝えたり、モチベーションがあがるようなことをしてみたり、子どもの気持ちが少しでも明るくなることができるような声かけをしましょう。
保育士からの言葉で、自信がつくかもしれません。
注目される手段
試し行動をすることで、保育士から、友だちから、注目される手段としてやってしまう子がいます。
しかし、それは良いこととは言えませんね。
集団の中でおかしなことをしてしまうと、年齢があがるにつれて、試し行動をする子は相手にされなくなり、孤立してしまう可能性の方が高いです。
良くないことは良くないと、はっきり伝えてあげましょう。
それと同時に、子どもの行動の背景を探りましょう。
虐待
家庭で虐待を受けた・受けている子は、保育士に対して試し行動をとることがあります。
家庭で虐待を受けているため、保育士も同じことをするのか・違うのか、保育士のことを試しているのです。
虐待を受けている子は、心に深い傷を負っています。
虐待が〝普通のこと〟として過ごしているのかもしれません。
子どもを守るために、保育士ができることはたくさんあります。
子どもや保護者に異常を感じたときには、早急に上司に報告し、その後の判断を委ねましょう。
保育士の気づきで、子どもの命を守ることができるかもしれません。
環境変化による不安
お引越しをした、弟妹が生まれた、親族が亡くなった、ペットを飼った、ペットが亡くなった、このような環境の変化で、心の不安から試し行動にでる子がいます。
環境の変化ですから、時間が解決してくれます。
子どもの気持ちに寄り添い、あたたかく見守りましょう。
大人でも環境の変化には適応するのに時間が必要な場合があります。
子どもも同じです。
やさしく、あたたかく、見守っていきましょう。
まとめ
今回は子どもの試し行動に対する保育士の対応についてお伝えしてきました。
子どもの試し行動の背景には、様々な原因があります。
些細なことがきっかけで、そのようなことにつながってしまったかもしれませんし、重大な原因があったのかもしれません。
保育士は、保護者とは違い、保育園で子どもと過ごす間、子どもの命をあずかって保育をする仕事です。
保護者よりも保育士の方が子どものことを知っている、そんなことだってあります。
保育士の気づきや対応が、とても大切になってきますので、保育士は強い心をもって、子どもと真摯に向き合っていきましょう。
試し行動の対応には正解はありません。
絶対に、感情的にならないこと。
これだけは心にとどめて、子どもと関わっていきましょう!