PR
「敏感期」とは、モンテッソーリが提唱する、人間が成長するうえで、特に敏感に感受性が働く期間のことです。
敏感期には種類があります。
どの敏感期も吸収する準備期間を経て、爆発的に成長していきます。
- 敏感期ってどういうこと?
- 敏感期って何歳から何歳なの?
- 敏感期について、具体的に知りたい
今回は『敏感期』について詳しくお伝えしていきます。
敏感期を知ることで、子どもの行動もより深く理解できるようになりますよ。
敏感期とは
『敏感期』とは、成長過程で特定の能力を獲得するために、感受性が特に敏感に働く時期のことをいいます。
これは、生物学者ド・フリースが発見した、敏感な感受性があらわれる期間のことです。
モンテッソーリの敏感期
モンテッソーリは、上記で説明した『敏感期』が、人間の子どもたちにも存在することを発見します。
モンテッソーリは知的障害児施設で、子どもたちが床に落ちたパンくずをつかもうとするのを見て、指を使いたいからだと発見しました。
そのことから、言葉を話すことや小さいものをすぐに見つけること、書くことなど、特定のことに夢中になる時期があることを提唱し、特に0〜6歳の各時期に顕著に顕れるとしました。
子どもたちは、同じことを何度も繰り返しながら、納得するまで取り組みます。
モンテッソーリの考え方は「子どもは本来自分の中に成長していこうとする<生命力>をもっていて、適切な時期に、適切な環境が与えられれば、自分で成長する」というものです。
引用:月刊クーヨン編集部(2011年)『0~6歳のいまをたのしむ モンテッソーリの子育て』(クーヨンBOOKS⑥)クレヨンハウス,P34
敏感期の種類
成長によってさまざまなことに集中して繰り返す時期があります。
この集中して繰り返す「敏感期」には、どのようなものがあるのかをみていきます。
言語の敏感期(胎児期7ヵ月~5歳半くらい)
言語の敏感期は胎内にいる時から始まります。
この時期はどんな言語も、イントネーション、アクセントも含め簡単に習得できる時期です。
3歳くらいまでは「無意識的記憶」として、意識せずにドンドン吸収していきます。
5歳半くらいまでは「意識的記憶」として、意識して吸収していく時期といえます。
このお腹の中にいる時期から始まる「言語の敏感期」の時期に、たくさんお話しをして、言葉のシャワーを浴びさせてあげたいですね。
感覚の敏感期(0~6歳くらい)
視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚の五感の感受性が敏感になる時期です。
3歳くらいまでは五感で感覚を吸収していく時期です。
その後、6歳くらいまでは感覚で得た印象を分類し、整理していきます。
この時期に五感を通した実体験をたくさんさせてあげられるといいですね。
運動の敏感期(6ヵ月~6歳くらい)
手や足を動かす、ハイハイをする、立つ、歩くなどのからだを動かせるように調整する時期です。
様々な動きを獲得していき、獲得した運動をさらに調整・洗練していく時期を経ていきます。
からだの粗大な動きから、少しずつ指先の細かい動きもできるようになっていくのがこの時期です。
時期に合った運動が思う存分できる環境を整えたいですね。
離乳の敏感期(5ヵ月くらい~)
ちょうど離乳食が始まる時期です。
この頃から赤ちゃんは、唾液や消化酵素の分泌が活発になり、食べ物に興味を示します。
小さなものの敏感期(1歳~3歳くらい)
大人に気づかないような小さいものに敏感に気がつく時期です。
小さいものへ目の焦点が合わせられ、小さいものをつまむことができるようになります。
小さいものに気づく観察力、集中力を、この時期に子どもたちと一緒に楽しんであげたいですね。
秩序の敏感期(1歳半~4歳くらい)
こだわりが強くなる時期です。
順番や場所、やり方などにこだわり、「いつもと同じ」が安心感につながります。
このように、同じことを繰り返すことで子どもたちは世界を理解していきます。
イヤイヤ期とも重なるこの時期。
秩序の敏感期を理解していれば、イヤイヤ期もゆとりを持って対応できます。
数の敏感期(3歳~6歳くらい)
数を数えたい、数字が気になる時期です。
置く場所や順序、多い、少ないなどの数的な要素に敏感になります。
この時期に数字とビーズやおはじきなどの数を具体的に見せることで、抽象的な数字が整理できるようになりますよ。
書くことの敏感期(3歳半~4歳半くらい)
書くことに夢中になる時期です。
読むことよりも先に、書く敏感期が現れます。
文字に興味を持ち始め、クレヨンや鉛筆を手でしっかり持って、手首をよく動かせるようになります。
目と手の協同作業が出来ていることが準備段階といえます。
礼儀作法の敏感期(3歳半~6歳くらい)
「おはよう」「ただいま」「ありがとう」などの挨拶や社会のルールに興味をもち始める時期です。
この時期に社会性や道徳観・倫理観を身につけていきます。
大人の姿をよく見て学んでいる時期なので、大人は手本となるような行動を子どもたちに見せてあげられるといいですね。
読むことの敏感期(4歳半~5歳半くらい)
文字に形や音があることを知り、それを読みたいと感じる時期です。
なんでも読んでみたいという衝動がありますので、わかるようになった文字から読んでいきます。
絵本やあいうえお表などを用意して、いつでも読める環境を作るといいでしょう。
文化の習得・集団・モラル(6歳くらい~)
自分を取り巻く世界が変わり、いろいろなものに興味関心を広げます。
また、友達やグループへと興味が変化していく時期です。
「なんで?」「どうして?」と興味が広がるので、答えを教えるのではなく、一緒に探しながら答えを導き出すという方法を伝えていけるといいですね。
敏感期・言語
言語の敏感期はお母さんのお腹の中にいるとき、胎内で耳から捉えた振動を音としてとらえられるようになる7ヵ月くらいから始まるといわれています。
赤ちゃんが胎内にいるときから、赤ちゃんに積極的に話しかけることで、赤ちゃんもお母さんの声を認識して、動き始め胎動も感じられるようになります。
最初はこのように、聞こえた音を「言葉」として無意識に吸収していきます。
これは、およそ3歳くらいまで続きます。
それまで、大人が話している口元をよく見たり、大人の問いかけに喃語で応えてみたり、といったように、言葉を無意識に吸収していくのです。
そうやって無意識に吸収した「言葉」を言いたくてたまらない「言葉の爆発期」が訪れます。
大人と同じような言葉を使ってみようとしたり、「これなに?」と質問してみたり、知っている言葉をとにかく使いたいという時期ですね。
この時期に、「あれが、ねこだよ」「これが、にんじんだよ」などの言葉を添えて、現実のもの、本物を見せて触らせてあげることが重要と、モンテッソーリ教育では伝えています。
このように3歳以降になると意識的に言葉を吸収していく時期になります。
言葉を「話す」から「書く」、「読む」の順に習得していきます。
「話す」と同様に「書く」「読む」敏感期も、急に始まるのではなく、その前に準備段階があります。
ものと名前が一致できる、具体的なものから抽象的なものが理解できる、手の運動機能が発達してくるなどの準備段階を経て、「書くことの敏感期」、その後の「読むことの敏感期」へと発達していきます。
運動の敏感期の事例
「運動の敏感期」はおよそ6ヵ月〜6歳くらいまで続くといわれています。
その「運動の敏感期」の事例をここではお伝えしていきます。
からだ全体を動かす粗大運動から、指先の細かい動きの微細運動まで、「運動の敏感期」といっても様々です。
一見いたずらに見えるような行動も「運動の敏感期」の一つです。
- なんでも口に入れてみる
- ティッシュを次から次へと出したがる
- 排水溝に石や葉っぱを落とす
- とにかくボタンを押したがる など
大人にとっては「危ない…」「汚れる…」というような行動も「運動の敏感期」であり、成長しているからこその行動です。
- 縁石を歩く
- 段差や階段を歩く
- 卵を割りたがる
- お皿を運ぶ
- 重いものを運びたがる
- 牛乳を自分で注ぎたがる など
細かい運動にも年齢が上がるにつれ、より興味を持ってきます。
- ボタンやスナップをする
- 洗濯物をたたむ
- お皿をあらう
- 包丁をつかってみる
- 折り紙をする など
全身を使った運動も好んでするようになります。
- 片足立ちをする
- 自転車に乗る
- 引っ張る
- 泳ぐ
- 走る など
このような全身を使った運動や指先を使った運動を日常で経験しながら成長していきます。
いたずら、あぶない、といった大人の目線ではなく、子どもの成長の一環として対応していけるといいですね。
そのための、「教具」という、子どもの発達を助けるための教材もモンテッソーリ教育では使用されています。
モンテッソーリの敏感期・0歳
0歳児の敏感期としては、特に下記の4点を理解しておく必要があります。
- 運動の敏感期
- 言語の敏感期
- 離乳の敏感期
- 感覚の敏感期
胎内にいるときも含めて、0歳児は見たもの、聞いたもの、触れたもの、味わったものなど、五感を働かせて様々な感覚をスポンジのように吸収して成長していく時期です。
すべての感覚の基本の部分を育んでいく時期ともいえますので、五感を通した体験をするなど、的確な援助ができるといいですね。
モンテッソーリの敏感期・1歳
1歳児の敏感期としては、特に以下の5点を理解しておく必要があります。
1歳児は0歳からの成長発達を通して、成長していきます。
「1歳児だから」ではなく、一人ひとりの発達をよく理解して成長を促してあげられるようにしたいですね。
- 運動の敏感期
- 言語の敏感期
- 感覚の敏感期
- 秩序の敏感期
- 小さなものの敏感期
五感を通してより世界を広げていく時期です。
一見すると、いたずらやわがままに見える行動も出てきます。
これも1歳児の敏感期の特徴と捉えて、様々な経験を援助するような関わりができるといいですね。
モンテッソーリの敏感期・2歳
2歳児の敏感期としては、特に以下の3点を理解しておく必要があります。
- 秩序の敏感期
- 感覚の敏感期
- 小さなものの敏感期
2歳児の敏感期も、1歳児の成長の流れから子どもをよく理解する必要があります。
イヤイヤ期とも重なる2歳児ですが、2歳児の敏感期の特徴をよく理解すれば、困った行動ではありません。
子どもの成長と捉えることができ、適切な援助ができるでしょう。
ゆとりを持って、成長を見守ることができるといいですね。
モンテッソーリの敏感期・3歳
3歳児の敏感期としては、特に以下の5点を理解しておく必要があります。
- 言語の敏感期
- 感覚の敏感期
- 運動の敏感期
- 書くことの敏感期
- 礼儀作法の敏感期
これまでの敏感期を踏まえて、新たな敏感期の始まりの時期でもあります。
「○○したい」という自分の意志をもって、意識的に吸収していくようになります。
子どもの敏感期をよく観察し、一人ひとりの発達に合わせて、適切な時期に、五感を刺激する体験ができるように、環境を整えるなどの援助ができるといいですね。
モンテッソーリの敏感期・4歳
4歳児の敏感期としては、特に以下の6点を理解しておく必要があります。
- 言語の敏感期
- 書くことの敏感期
- 数の敏感期
- 礼儀作法の敏感期
- 運動の敏感期
- 読むことの敏感期
子どもだけでなく、大人の目にも、自分の意志で出来ることが増えてきたと感じる時期です。
引き続き五感を通した実体験を経験することが望ましいです。
さらなる成長のために、子どもをよく観察し環境を整えられるといいですね。
敏感期は何歳まで?
これまでみてきたように、モンテッソーリの敏感期は、そのほとんどが0〜6歳に集中しています。
これは6歳までしか敏感期はない、という捉え方ではなく、0〜6歳の幼児期がとても重要ということです。
モンテッソーリは誕生から成人までを【幼児期】【児童期】【思春期】【青年期(成熟期)】の4段階に分け、それぞれに様々な経験を通して成長していくとしています。
その中でも【幼児期】に学びの原型があると考えられています。
敏感期の具体例
敏感期の具体例として、どのようなものがあるか紹介していきます。
前述した、「言語の敏感期」・「運動の敏感期」以外の敏感期の具体例をあげていきます。
感覚の敏感期
- 積み木を大きさ順に並べてみる
- ビーズなどを同系色で繋げる
- すべすべの石を集める
- 味の好みが出てきたり、「すっぱい」「からい」がわかる
- においだけで「今日のご飯はカレーだ」とわかる
離乳の敏感期
- 大人が食べているものに手を伸ばす
- 大人が食べているものをじっと見る
- 乳歯が生えはじめる
小さいものの敏感期
- 落ちているゴミや髪の毛をつまむ
- 空を飛んでいる小さい飛行機に気がつく
- どんぐりや小石などを拾い集めるのを楽しむ
秩序の敏感期
- 気に入った洋服を毎日着たがる
- 同じルートで帰りたがる
- いつも同じ場所に座りたがる
数の敏感期
- 積んだ積み木の数を数える
- 駐車場の番号を読む
- 自分のと比べて多い少ないがわかる
書くことの敏感期
- 文字っぽいものを書いて表現する
- 手紙を書くことが好きになる
- 迷路や点つなぎに夢中になる
礼儀作法の敏感期
- 「○○しちゃいけないんだよ」と知り得たマナーを人に伝える
- 挨拶が自然にできるようになる
- マナーやルールに興味を示し、理解して使おうとする
読むことの敏感期
- 絵本を一人で読みたがる
- 看板に書いてある読める文字を読む
- いろいろな文字に興味を示し読もうとする
文化の習得・集団・モラル
- 自分たちで小集団を作って遊ぶ
- 世界・世の中のことに興味をもつ
- 探求心が広がり、図鑑などを使って知ろうとする
まとめ
モンテッソーリが提唱する、人間が成長するうえで、特に敏感に感受性が働く期間、「敏感期」を11種類ご紹介しました。
どの敏感期も吸収する準備期間を経て、爆発的に成長していきます。
また、一つの敏感期が他の敏感期に影響を与えている場合もあります。
私たち大人が、子どもの敏感期を理解することは、子どものありのままを理解し、受け入れること。
子どもの成長発達のために、敏感期を理解して子どもと関わってみてくださいね。